衆議院の優越とは?どんな場面で優先される?

今更聞けない政治

以前、衆議院と参議院の違いを解説した際に衆議院の優越について少し触れました。
今回は衆議院の優越にフォーカスを当てて解説していこうと思います。

衆議院の優越とは

衆議院は参議院に対して様々な場面で優先される権限を持っています。
基本的に衆議院と参議院は同等の権限を持っていることになっていますが、この「衆議院の優越」がある以上、衆議院の方が力を持っているといっても過言ではありません

ちょっとした優越なら同等とも思えるのですが、「参議院が反対しても法律を変えられる」ことや「総理大臣の指名も衆議院の決定が優先される」ことを考えると、実質総理大臣になるのは衆議院議員です。これで同等だというのは少し無理がないかなと個人的には思っています。

衆議院に優越がある理由

衆議院に優越がある理由として、「任期の短さや解散があることから参議院に比べて直近の民意が反映される為」だとされています。

そもそもなぜ参議院ではなく衆議院に優越があるかと言うと、参議院が元々貴族院であったことに由来していると言われています。
衆議院と貴族院の二院制時代は、衆議院議員は庶民のみで貴族院は皇族や華族で構成されていました。
つまり民意を反映されるのは衆議院のみだったわけです。庶民の意見を無視して政治が行われないように衆議院に優越を設けたのが衆議院の優越の理由です。

衆議院の優越の内容

衆議院の優越は大きく分けて「憲法上の優越」と「国会法上の優越」に分けられます。
ざっくり内容を箇条書きしたのが下の画像です。

少し掘り下げて解説していきます。

憲法上の優越

議決の効力における優越

この議決の効力における優越を簡単に言うと「衆議院と参議院で意見が割れたら衆議院の決定を優先しますよ」ってことです。僕が衆議院と参議院が同等じゃないと思う理由はこれです。

・法律案の議決
衆議院可決後に参議院で否決され返付された(又は修正議決され回付された法律案への同意を拒否した場合の)衆議院議決案を衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば法律となる。衆議院可決案の受領後60日以内に参議院が議決しない場合、衆議院は参議院が法案を否決したとみなすことができる(憲法第59条)

・予算案の議決
衆参で議決が異なる際に開く両院協議会で成案が得られない場合、又は衆議院議決案の受領後30日以内に参議院が議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となる(憲法第60条)

・条約の承認
衆参で議決が異なる際に開く両院協議会で成案が得られない場合、又は衆議院議決案の受領後30日以内に参議院が議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となる(憲法第61条)

・内閣総理大臣の指名
衆参で議決が異なる際に時に開く両院協議会で成案が得られない場合、又は衆議院議決後10日以内に参議院が議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となる(憲法第67条第2項)
※国会休会中の期間は除く。日数計算は慣例により即日起算(初日算入)

権限の事項における優越

・予算の先議権
予算案の議決の際に衆議院への先議権が認められている(憲法第60条)

・内閣不信任決議、内閣信任決議
衆議院にのみ認められている(憲法第69条)

国会法上の優越

・臨時国会の会期、特別国会の会期、国会の会期延長
衆参で議決が異なる場合、又は参議院で議決しない場合は、衆議院の議決による(国会法11条 – 13条)

法律案議決が衆参で異なる場合の両院協議会の請求
衆参の法案の議決が異なる時の両院協議会開催に関して、衆議院の請求は衆議院可決法案を参議院で否決した場合や衆議院可決法案に対する参議院修正法案を衆議院が同意しなかった場合に可能だが、参議院の請求は参議院議決案に対する衆議院修正案に参議院が同意しない場合に限られ、衆議院は参議院の請求を拒否することができる(国会法第84条)

様々な状況で衆議院が優先されている

これらの場面で衆議院の優越が認められ、総理大臣の指名が衆議院なので結局は内閣も衆議院寄りです。「解散がある」というのは一見、衆議院議員のデメリットのように思えますが総理大臣が任意のタイミングで選挙が行えるので「伝家の宝刀」と呼ばれるほど強いカードです。
これで衆議院と参議院が同等といえるのでしょうか?皆さんはどう思いますか?

安定して議員という職に就いていたいのであれば参議院議員の方が良いのかもしれませんが、総理大臣を目指すのであれば衆議院議員になる必要がありますね。(法律では参議院議員も総理大臣にはなれるが、、)

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